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パーク・ライフ 吉田修一著を読んでの書評。

パーク・ライフ 吉田修一著 文春文庫 2004年10月10日第1刷

 

パーク・ライフ 吉田修一著を読んでの書評。

 

パーク・ライフは「パーク・ライフ」、「Flower」の二つの小説で構成されている作品です。第127回(平成14年上半期)芥川賞受賞作品。

 

パーク・ライフ」のあらすじは日比谷公園を舞台に、独身男性と地下鉄の中で出会った女性との微妙な距離感の交流を描いたもの。「Flower」は九州から上京したの主人公(既婚の青年)の会社内での人間関係と夫婦間のやりとりを描いたもの。

 

パーク・ライフ」は偶然地下鉄の中で出会った女性と、日比谷公園で再会し、主人公が言葉を選びながら徐々に関係を近けていく様が切なく、また、周りの登場人物たち、(近藤さん、宇田川夫婦、主人公の母親、初恋の人ひかる、同級生の近藤(女))などとのつながりややりとりもちりばめられ、東京で生きるとはかくも繊細なものかと人間関係の機微を改めて実感する作品。

 

「Flower」は主人公とその妻が上京して、飲料メーカーに勤めながら、先輩である望月とのやりとり、育ての親である祖母との思い出を、共通の趣味である生け花を中心にストーリーが展開していく。どちらかといえば行儀はよい作品ではなく、人間の悲しい部分にフォーカスした作品。

 

パーク・ライフ」を読んで残った言葉として、『周りの人たちとうまくやっていきたいからこそ、土日ぐらいは誰とも会わず、誰とも言葉を交わさずにいたい。』である。個人的所感ではあるが、自分ひとりだけで思索する時間、一人で向き合う時間は不要な人もいれば、必要とする人も少数派かどうかはわからないがいると思う。私がそうであるが、人と付き合いたいが、深く入りすぎて窮屈になることも多々ある。この主人公は平日はいくつかの居場所を持ち、日比谷公園という一期一会に近いような居場所を持っている。人との距離感をうまくとり、休日は一人で過ごす方がいいというキャラクターに共感してしまった。また、作品の最後であるが、作品が短すぎるせいか、もう少し先の展開まで読ませてほしかったというのが本音である。

 

「Flower」は「パーク・ライフ」とは設定がうってかわり、雑多な作品という印象がある。現実世界の中小企業であるようないびつな人間関係が描かれて、永井さんのどこまでも貧乏くじを引くというかわいそうさに一番ひきこまれてしまった。どこの組織でもいるようなスケープゴート、それだけにはなりたくないと会社内での人間関係は本当に気をつけないといけないと再認識させられる。

 

この文庫は、作品自体も短く、サックリと読めるので、感情移入はそれほどできないが、一読してちょっと切ない後味の残る作品だと思う。特に上京して自分の立ち位置に迷ってる人には共感できる作品ではないかと思う。