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書評:知的幸福の技術 橘玲著

知的幸福の技術 橘 玲(たちばな あきら)著の読後感

 

知的幸福の技術 自由な人生のための40の物語 橘 玲著 幻冬舎 平成21年10月10日 初版発行を読んでの読後感。

 

著者は高度成長期からバブル崩壊までの安定的な企業所属とその後の国民、厚生年金での老後について警鐘を鳴らしている。公的年金制度は若い世代から高齢世代への仕送りで若い世代が減ると今後の年金制度は立ち行かなくなる。

 

これについては、個人的には周知していたが、GPIFが年金運用で、昨今株式運用で5兆円損失をだした、との報道もあり、年金保険機構から今提示されている将来の保険料がもらえるかどうかという前提もうかがわしいという不安に駆られた。安定的に老後を過ごすには1億円の個人資産がないといけないという、究極の個人責任が突きつけられて、老齢で働く選択肢が少ない日本社会での袋小路ともいうべき結論、どうしても個人的にはそこからのブレイクスルーがないかどうか考えてしまう。企業の終身雇用制度が破たんしている昨今、進むも地獄、戻るも地獄といった現実を突きつけられた。

 

また、著者は民間の医療保険、生命保険についても疑問を呈している。保険料はまだ利回りのいい宝くじのようなものであると言っている。亡くなれば、病気になれば保険が降りるが、長生きすればするほど保険料のコストがかかるとのこと。独身や子供が成人になってしまえば入るのは懐疑的だと言っている。個人的には保険を宝くじに例えるところに著者の視点の高さを感じ、また、保険の付加価値といっていい、安心感と家族への愛情を示すもの、というところに、保険業界のCMを見るたびに保険業も付加価値商売なのか、という社会への不信感を感じざるを得なかった。

 

著者はマイホームを持つことについて、他の株式投資、FXなどと比較して、利率の悪い投資というドライな見方をしている。頭金500万円として、3000万円の家を購入するとレバレッジは6倍、それで家の価値は築年数とともに減っていく、また地価も昨今の経済状況では横ばいか下落する。それは元本割れをわかっていて投資するようなものだとのこと。

 

この書を読んで感じたことは、公的年金、生命保険、マイホーム。一般市民が特別視するもの、心のよりどころにしている事柄を客観的に、冷徹に見て非常に投資効率の悪いものだという視点も必要であるが、個人的にはこの心のよりどころ、幻想に頼っていく一個人から脱却できないのだろうなということである。客観的に投資効率が悪いといっても、それに抗って生きていく強さはなく、私にとっても将来ジリ貧と分かっていてもこの社会構造から脱却する力をもっていない一個人だなと、敷かれたレールの先が崖でも走り続けなければならない、この悲哀を共感しながら日々の生活の課題を1個ずつ片づけていくしかないのだなと再認識した。このハムスターのカラカラにも似たこの人生からのブレイクスルーをどこかで期待しつつ、今回の読後感とさせていただく。